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伊坂幸太郎の「チルドレン」を読む。 [本]

伊坂幸太郎は読みたいと思っていたのだけれど、今まで読まずにいた。オーデュボンの祈りを買って、半分ぐらい読んでどこかにやってしまった気がするが、案山子が話すという突拍子のなさでも飽きてしまったのかもしれない。

さて、「チルドレン」の話だが、いわゆる子供は出てこない。これからはネタバレというか内容を出してしまうので、これから読む人には向かないのでそのつもりで。新しい本ではないけど、年代を気にしないものになっているのでいつ読んでもいい感じ。軽快に推理小説を読んでいる感じがしてオススメです。

チルドレン (講談社文庫)

チルドレン (講談社文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/05/15
  • メディア: 文庫



チルドレン (講談社文庫)

チルドレン (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/05/15
  • メディア: Kindle版



五つの短編をまとめた本で、雑誌に出た時はあまり繋がっていなかったみたいだけど、単行本化のために加筆というか変更したらしい。そのために続きの話としてスムーズに読める。大体、短編集というものは細切れが多いのだが、これは一つの長編小説としても読める。

ガンダムがシャアを軸にした話であるように、チルドレンは陣内クロニクルみたいな感じになっている。それぞれの話では主役じゃないのだが、話のスジ的にいなくてはならない人物というか、サブ主人公というか、そういう役割になっていた。陣内という人はめちゃくちゃな人で、話を引っ張っていく原動力いなっていた。


・バンク

銀行強盗の話。盲目の青年が問題を読み解く。おぉこれは推理小説みたいではないか、と思ったが、それは後の「レトリーバー」にも通づるところがある。よくできた話であるが、このくらいのレベルのカラクリで長編小説をダラダラと続ける輩がいることに愕然とする。このくらいの短さならもったいぶる感じがなくてすごくいいと思う。推理小説で散々引っ張っておいて、それがタネかよというものが多いんだよなぁ。

・チルドレン

本の題名である、本命であろう話。法律上の大人でないという意味でのチルドレンということなんだろう。バンクで出てきた陣内さんが年を食って出てくる。一般的に誤解されて使われている言葉であるいわゆる「破天荒」キャラなのだが、今回もめちゃくちゃである。まぁ解決法として真似するにも真似できないところはあるよな。

家裁の調査員という非常にニッチな職業の話なのだが、参考文献がきっちり書かれていて想像だけの話ではないのがわかる。どこかの日本の歴史を書いているハゲが参考文献表示せずにパクリを繰り返していたのを考えると、これが普通の文章を書く人の行動だよなぁと無駄に感心してしまう。

家裁に来た親子の挙動がおかしいのが種明かしされるわけだが、家裁に来る親子なんてこんなもんかと思ってしまえたところが非常にうまい。推理小説的な部分として考えるなら、全部詳細を晒した上で納得できる意外な事実というのはとても納得がいって気持ちがいい。ほぼ隠して最後にネタばらしとかされても、それって推理小説って言えるの?ってのがあるから、こういうのはやっぱりすごく潔い。


・レトリーバー

今回も陣内がめちゃくちゃである。自分が告るところを見に来てくれと盲目の永瀬に来させる時点でおかしいのだが、カポーティの言葉を借りて、自分が振られたから世界が止まっているとさらにめちゃくちゃな主張をする。今回も永瀬の推理が冴えたわけだが、盲目だからといってそこまでクレバーな人がいるとは思えないんだよなぁ。ともあれ、陣内と永瀬の世界の異常さを嗅ぎ取る能力は素晴らしいものがある。そしてネタあかしは今回も面白かった。この短さでネタを捨てるように使うのは豪華と言えるべきなのかもしれない。


・チルドレンⅡ

チルドレンの人事異動したちょっと後の話。陣内さんが珍しくまともだった。今までがまともじゃないから、今度は何をするのかと期待したがまともすぎて拍子抜け。そういう緩急も伊坂幸太郎のうまさが光る。今までの話に比べて、パッとするところが特になかったけど、離婚調停と少年の非行を絡めて順当にうまい話になっていた。


・イン

インって何かと思ったら、着ぐるみの中にインだったわけですね。他にインしていたところはなかったと思うけど。永瀬目線で語られていたので、推理部分が目新しい気はした。目が見えないんだから、陣内が頭をとって外で休憩しているなんて思いもつかないよなw。子供に犬と言われている陣内がすごく笑えた。着ぐるみにビビっていた犬にも笑った。最後にふさわしい楽しい話で締めくくっていた。読後感がいいね。最後に親父を殴りにいくところも素晴らしいw。


そんなこんなで、サクッと読めた。他にも伊坂幸太郎の本を読もうかなと思わせた本でした。

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